M&A・事業承継コラム

【2026年最新】リゾートホテルの業界動向と課題

リゾートホテル業界は現在、ポスト・パンデミックの回復期を経て、かつてない規模のダイナミックな変革期を迎えています。

訪日外国人旅行者(インバウンド)需要の爆発的な増加や、働き方の多様化に伴う新たな旅行スタイルの台頭により、市場全体は力強い拡大基調にあります。

しかし、その活況な表面とは裏腹に、ホテルの経営現場からは「客数は戻ったが、利益が残らない」「現場の負担ばかりが増していく」といった悲鳴に近い声が聞こえてくるのも事実です。

本記事では、最新の調査データをもとにしたリゾートホテルの現状と動向、業界特有の課題や取るべき備えについて解説します。

目次

リゾートホテル市場はグローバル規模で拡大基調が続く

爆発的なインバウンド需要と「ブリージャー(ブレジャー)」の台頭

世界のホテルおよびリゾート市場の売上高は、2034年末には11兆2,557億9,000万米ドルに達し、年平均成長率(CAGR)20.3%という極めて高い水準で推移することが予測されています。

日本国内においても、円安を背景としたインバウンド需要の恩恵は大きく、観光庁の宿泊旅行統計調査(2025年)によれば、リゾートホテルの客室稼働率は前年から堅調な上昇を見せています。

また、リモートワークの定着により、出張にレジャーを組み合わせた「ブリージャー(ビジネス + レジャー)」という新たな旅行形態が台頭しました。

これにより、リゾートホテルには従来の「癒やし」だけでなく、充実した通信環境やワークスペース等のビジネスインフラの提供が求められるようになっています。

テクノロジーの社会実装による効率化の波

需要の増加に対応すべく、業界全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進んでいます。

オンライン予約の高度化にとどまらず、受付ロボットや配膳ロボット、自律型清掃ロボットの導入など、慢性的な人手不足を補いながら顧客体験(CX、カスタマーエクスペリエンス)を向上させる取り組みが、リゾート施設にも普及し始めています。


売上増に隠れた「構造的課題」

需要が回復し、トップライン(売上高)が伸長している一方で、国内のリゾートホテル業界は深刻な構造的課題に直面しています。

食材・人件費の高騰と低迷する「価格転嫁率」のパラドックス

現場の収益性を著しく圧迫している最大の要因が「仕入れコストと固定費の高騰」です。

帝国データバンクの調査によると、ホテル・旅館業界における価格転嫁率はわずか24.9%にとどまり、全産業の中でも極めて低水準に沈んでいます。

消費者の旅行控えを恐れるあまり、原価上昇分を適切に宿泊料金へと反映できておらず、現在の業界は「売上は伸びているが、利益率が極端に低下している」という「収益(利益)なき繁忙」のパラドックスに陥っています。

改正旅館業法など新たなコンプライアンスへの対応負担

2023年12月に施行された「改正旅館業法」により、カスタマーハラスメント(カスハラ)に該当する迷惑客の宿泊を合法的に拒否できる法的根拠が整備されました。

これは従業員を守る強力な武器となる一方で、グローバルスタンダードに合致したコンプライアンス体制の構築や、人権に配慮したオペレーションマニュアルの策定など、経営陣に求められるガバナンス(経営・管理体制)のハードルは格段に上がっています。


成長を止めないための「多角化」と「高付加価値化」

こうした厳しい利益構造から脱却し、持続的な成長を実現するためには、これまでの延長線上にはない新たな戦略が必要です。

  • データに基づくダイナミックプライシングの導入
    過去の予約データや競合の価格動向を分析・解析し、需要の波に合わせて機動的に宿泊料金を変動させることで、閑散期の底割れを防ぎ、繁忙期の利益を極大化

  • 「文化適応型おもてなし」による直販比率の向上
    ハラール、ヴィーガン、アレルギー対応など、インバウンド層の多様な文化的背景に事前対応することで、圧倒的な心理的安全性を提供し、OTA(オンライン旅行代理店)の手数料に依存しないリピーターを獲得

  • 補助金を活用したサステナビリティ投資
    「令和7年度 宿泊施設サステナビリティ強化支援事業」などの国や行政の補助金を活用し、初期負担を抑えながら省エネ設備や再生可能エネルギーを導入することで、環境意識の高い富裕層に向けた高付加価値リゾートへの転換を図る


経営基盤を強化し未来へ価値をつなぐ「M&A」という選択肢

事業環境の二極化が進む中、自社単独での設備投資やDX推進に限界を感じる事業者にとっての現実的な戦略として、M&A(事業承継)が注目を集めています。

大手チェーンや異業種が「地方リゾート」を求めてい

豊富な資金力を持つ新興ホテルチェーンや外資系ファンドだけでなく、近年は不動産やIT分野などの「異業種」からの参入が相次いでいます。

彼らにとって、地方で長年培われたリゾートホテルの「土地・建物」「認知されたブランド」「地域とのネットワーク」は、ゼロから立ち上げるには膨大な時間とコストがかかる強力な「見えない資産」であり、自社のテクノロジーや顧客基盤と掛け合わせることで、大きなシナジーが生み出せると評価されることが多いです。

売り手と買い手それぞれに潜む「期待値のギャップ」

しかし、M&Aは単純な売買ではありません。

売り手(譲渡)側と買い手(譲受)側には、それぞれに解決したい課題やM&Aに対する期待値に根本的なギャップが存在します。

売り手(譲渡)側のギャップについて

  • 代表的なケース
    地方独立系の創業家経営者

  • 具体的な課題
    資金繰りの悪化、後継者不在、設備老朽化

  • M&Aへの期待
    適正な事業価値の把握

    従業員の雇用維持や創業ブランドの存続


買い手(譲受)側のギャップについて

【買い手(譲受)側①】

  • 代表的なケース
    大手チェーン・ファンド

  • 具体的な課題
    割安なバリューアッド(収益最大化)案件の枯渇

  • M&Aへの期待
    インバウンド恩恵地域での案件発掘

    買収後のDX推進による徹底した効率化と利回り向上4

【買い手(譲受)側②】

  • 代表的なケース
    異業種からの参入組

  • 具体的な課題
    旅館業法など複雑な法規制への知見不足

  • M&Aへの期待
    業界特有の法的ハードルクリア手法

    本業とのシナジーによる新たな体験価値の創出


M&A成功の真の鍵は「PMI」と「見えない資産の評価」にある

このギャップを埋め、M&Aを成功に導く最大の鍵はPMI(買収後の統合プロセス)にあります。
契約の締結はゴールではなく、スタートに過ぎません。

買い手がいきなりドライな効率化を現場に押し付ければ、従業員の大量離職や地域社会からの反発を招き、売り手が積み上げてきたブランド価値は一瞬で毀損します。

M&Aを「投資」から「成長」へと昇華させるには、リゾートホテルが持つ歴史や文化、従業員の技術といった「見えない資産」を正しく評価し、丁寧に引き継ぐプロセスが必要不可欠です。


「廃業」や「現状維持」ではなく、もう一つの未来へ

リゾートホテル業界は今、市場が拡大しているからこそ、経営戦略の差がダイレクトに企業の明暗を分ける時代に突入しています。

高騰するコストや人材不足、後継者不在といった課題に対し、「もう自力では続けられない」と感じたとき、選択肢は「廃業」だけではありません。

あなたが長年守り育ててきた施設やブランド、そしてスタッフの雇用を、資本力と最新のノウハウを持つパートナー企業へ引き継ぐ「M&A」という選択も、未来への前向きな決断の一つです。

自社の本当の事業価値はどれくらいなのか。どのような企業が自社に興味を持ってくれる可能性があるのか。

まずは自社の「見えない価値」を客観的に知ることで、次なる成長への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考情報・引用元情報欄

国土交通省 観光庁 |「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャーhttps://www.mlit.go.jp/kankocho/workation-bleisure/

Fact.MR|世界のホテル&リゾート市場の展望(2024年〜2034年)に関する業界レポート
https://www.marketresearch.co.jp/insights/hotel-resort-market-fact-mr/

厚生労働省|令和5年12月13日から旅館業法が変わりました
https://www.mhlw.go.jp/kaiseiryokangyohou/

国土交通省 観光庁 |宿泊旅行統計調査(2024年〜2025年最新動向データ)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001984051.pdf

国土交通省 観光庁 |令和7年度 宿泊施設サステナビリティ強化支援事業(補助金案内ポータル)
https://hojyokin-portal.jp/subsidies/53542

執筆パートナー

ウィザーズグループ

パートナー情報

コスト削減やM&A等を通し、限りある経営資源を最大化する「実働」コンサルティング集団

WEBページ

https://www.wizardz-plus.jp/

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